With Le Man Spirit! すべての道は「ルマン」に通じる。

AutoExe設立以前のマツダスピード時代より参戦し続けてきた「ルマン」。この戦いは一般公道を含むコースを24時間走り続ける究極のストリート。F1に代表されるスプリントレースとは異なる耐久性や快適性が求められる。だから日常の公道におけるスポーツとしてクルマの理想は、「ルマン」的チューニング。つまり、快適で安全で速いこと。レース仕様から派生したチューンが流行中の当時、高品位なストリートベストのスポーツ性を主張した。同時に、部品単位での高性能を追い求めがちなアフターパーツ業界にあって、クルマとしてのトータルバランスに主軸を置いた車種発想のコンプリートチューンの礎を築いた。


2002~1997

諸兄諸姉もご存知のごとく、「ルマン」のコースには一般公道が含まれる。レースの前日まで、近隣のマダムたちが買い物に出かけるプジョーや、干草を満載した古いシトロエンが行き交う。そこはごく普通の生活道路だ。ドライバーの安全を守る設備以外には、特にレース仕様というものはない。路面の状況もさまざまだ。もちろん、レース直前の数日間を除いて、テスト走行も許されない。参加車両は、ほとんどぶっつけ本番で、この高速耐久レースに臨むのである。しかも、真夏だから、昼間の気温は30度以上になる。夜はセーターなしではいられない。突然の豪雨に見舞われることも多い。そして、いったんピットを通過したら、13.6キロのコースを一周しなければ、応急の修理を受けることもできない。ここで勝つためには、だから、信頼性や安定性が欠かせないのである。
もうひとつ、「ルマン」を勝つ特別な条件をあげれば、それはドライバーを疲れさせない性能だ。あまりにシビアすぎる操縦性も、この意味では失格である。何しろ24時間を走り続けるのだから、3人交代で走っても、後半には疲労困憊する。注意力も落ちてくる。ミスも起きる。だから、「ルマン」を走る車には、運転のしやすさが不可欠なのである。馬鹿げていると思うかもしれないが、シートの座り心地も無視できない。硬すぎれば、ドライバーのお尻はあざだらけになってしまう。屋根つきの車の場合は、空調も重要だ。ベンチレーションが悪いと、脱水状態になる。さすがに音響装備まで要求するドライバーはいないが、要するに、「ルマン」を走る車は、一般のストリートを走る車の延長上に存在しているのである。そこが、たかだか2時間も我慢すればすむF1との、決定的な違いである。
私たちAutoExeが、なぜ、「ルマン」にこだわり続けるかは、すでに明らかだろう。世に言うチューニングカーには、F1的またはラリー的なものが多い。最近では、これにホットロッド指向も加わった。もちろん、それ専用のスポーツ車両なら、問題はない。だが、日常の足としても使用するなら、理想は「ルマン」的チューニングである。快適に、しかも安全で、速いこと…。それが私たちの目指すチューニングの目標なのだ。だから、その絶妙のコンビネーションを肌で感じるには、その評価の基準を高い水準に保つには、どうしても「ルマン」が必要だ。今やファクトリーを離れた私たちに「ルマン」を勝つチャンスはないかもしれない。だが、世界の一流と競って、そのセンスを磨かねばならない。世界の名車は「ルマン」から生まれた。その意味でも、「ルマン」はストリートの延長なのである。