急流のような時代にあっても、私たちの不変の指標。
それは“A New Driving Sensation”、チューニングの歓び

人々のモノに対する熱い欲求は、どこへ行ってしまったのだろうか。より華やかな生活への憧れや上昇志向は、なぜクールダウンしてしまったのだろうか。車についていえば、スポーツカー冬の時代や、若者の自動車離れが指摘されている。そんななか2008年後半、世界を歴史的な経済危機が襲った。そして、その打撃を受けた最右翼のひとつは、まぎれもなく自動車産業だった。
しかし、車への夢が膨らみにくいこの時代にあっても、私たちAutoExeは、ファンの方々の支持を得て着実に基盤を広げつつある。それはアウトプットの製品もさることながら、私たちのモノづくりに対する「こだわりとことわり」、つまり「製品化の目的と、そのための方法論」が一定の支持を得てきたという証明ではないだろうか。いまや製品の機能もさることながら、そのバックボーンである企業の理念や志なしには、モノはあなたを刺激することも、あなたから選ばれることもない。停滞する時代の空気をはねのけ、チューニングへの熱い欲求を呼び覚ますべく、2009年版のAutoExe総合カタログは、まず、そんな「こだわりとことわり」をあらためて語ることから始めたい。

「マツダ車個性化プロジェクト」・・・私たちに、マツダの血が濃い理由。

AutoExe創立から10年以上の歳月が流れた。長年のユーザーを別にすれば、なぜ私たちがマツダ車専門のチューニングパーツメーカーなのかご存じない方も増えてきている。そこで改めて私たちの出自を語ると・・・AutoExeはマツダの子会社としてレース部門を担当していたマツダスピードから1997年独立、創業した。メンバーはマツダスピード出身者が大半だったため、おのずとマツダ車のチューニングパーツが専門となった。他メーカー車用のオプションを手がけることも視野に入れなかったわけではない。しかし、私たちのこだわりのひとつ、「小さな組織による柔軟性・機敏性」とそれによる「迅速な顧客対応力」に照らし合わせた時、その路線は選ばれなかった。
また一部の部品ではなく、スタイリングから機能面まで一台の車をトータルにチューンする車種発想を目指したことも、私たちを「狭い。しかし、より深い」一社特化のフィールドへと向かわせた。もちろん、このメーカーが世界の自動車メーカーの中でも屈指の「スポーツカー好き」であり、格好の素材提供者であったことも私たちのモチベーションを加速させる要因だった。このような経緯から、私たちのAutoExe Optionsが多くのマツダディーラーで購入・装着できるのも他のチューニングメーカーにはない大きな特徴となっている。

「A New Driving Sensation」・・・量産車の枠を超えたスポーツ感覚の創造。

マツダ車オーナーの中でもとりわけ個性やオリジナリティを求める人々へ、明快なきわだちを提供し続けたい・・・。そのきわだちとは、量産車の枠を超えた豊かなスポーツ感覚、私たちのキーワードでいえば、A New Driving Sensationである。不特定多数のユーザーがどのような使い方をしても不都合を起こさない量産車(オプション品も例外ではない)の過剰なまでのマージンを削って、操縦性や乗り味を自分たちの身体で確かめたスポーツの醍醐味へ挑戦する。それは、たんにパワーがあればいい、目立てばいい、あるいはサーキットのみで通用するような手法とは一線を画するチューニング。車検にしっかり対応する保安基準適合設計やストリートという使用目的を逸脱しない、操作性や快適性を遵守した正常進化である。つまり、純正オプションでは体感度や変化に乏しい、しかしアフターパーツでは変化度の大きさやアフターケアに不安が残る・・・AutoExe Optionsは、そのどちらにも飽き足らない要求レベルの高い人々に向けた高品位なチューニングである。
同時に、このチューニングはFun to Tune=自分らしい車に仕立て上げる歓びでもある。メーカー任せ、他人任せにしないで、自分自身がエンジニアになった気分で、どこをどうすれば車がどう変わるのか、どこまで自分の波長に近づけられるのかを、学びかつ愉しむ道でもある。結果だけでなく、そのプロセスもFun。手を入れるごとに増していく醍醐味やときめきを、あなたと分かち合えれば、なによりうれしい。

「信頼関係の深化」・・・あなたとの、社会との絆を強固にするために。

本家本元の純正オプションではなくても、それと同等のあるいはそれ以上の信頼性や安心感を獲得するには、詳細かつ真摯な情報公開が鍵になると私たちは考える。具体的には、①「ウェブサイトの充実」。たとえば製品の不具合については専用コンテンツで情報を早期に開示したり、チューニング相談は24時間以内の返答を目指している。②「スポーツフェアなどイベントの開催」。デモカーを用意したスポーツフェアを定期的に開催し、製品を直接見ていただく場づくりに努めている。③「精度の高い広告活動」。イメージのみの表現や誇張を排し、情報精度が高い広告活動にこだわっている。イベントなどで製品に触れる機会には限度もあるので、広告やカタログにおいては入念で正確な説明を重視している。
提供できる「価値」をできる限り本音でお伝えし、同時にあなたのご意見や欲求に正面から応える。その努力を私たちは今後も重ねて行きたい。

運転を愉しむには、人と車のコミュニケーションが欠かせない。
問題は、そのためのインターフェイスを、何に求めるかだ。

AutoExeの商品開発の目標は、サーキットのラップタイムをコンマ何秒とかの単位で短縮するような絶対性能の追求ではなく、運転すること自体の愉しみを極めること…いわゆるFun to Driveな感覚の高揚である。そして、私たちが標榜する”A New Driving Sensation”とは、その結果として生まれる「人と車が対話しながら駆ける感覚」であり、そのような関係を創造することの醍醐味が“Fun To Tune”だと考えている。今回のカタログでは、この「人と車が対話する」ためのコミュニケーション能力に焦点を当てて、その技術的な肝を探ってみたい。
「体感」こそ、人と車の最良のインターフェイスである。

会話とかコミュニケーションが成立するためには、とりあえず「インターフェイス」つまり「情報の接点」が必要である。人と車の関係なら、「人の意思を車に伝達するシステム」と、「車の状態を人に知らせるシステム」がそれに当たるだろう。具体的には、人が車に情報を入力するステアリング・アクセル・ブレーキ・シフトレバーなどの操作系と、車が人間に対して情報をフィードバックする各種メーター・ワーニングランプ・ナビゲーションシステムなどがこれに該当する。この両方がないと、人は車を運転することすらできない。そして、より緊密なコミュニケーションを実現するためには、これらのインターフェイスを、できる限り人に優しいものに進化させることが求められる。車の歴史をたどれば、本来の機能・性能の向上と並行して、このインターフェイスの領域でも、多くの進化が図られたことがお分かりになると思う。
そこで、本題に移ると・・・現代の量産車には、さまざまなヒューマン・インターフェイスが搭載されている。人間の声での道案内などはその最たるものと言えるが、それらの多くは、いわゆる「安全・安心」もしくは「快適」のための情報提供に特化してる。しかし、運転を愉しむためのインターフェイスという意味では、ほとんど進歩がなく、むしろ退歩しているとさえ思われる。例えば、スピードメーターは、見やすくはなっているとしても、依然として速度を知らせるだけで、運転感覚を左右する加速度などは表示されない。ロールの角度や速度も表示されない。ヨーもしかりである。 車の挙動変化に関するフィードバックは、新しいインターフェイスを持つことなく、100年前と同様に私たちの「体感」に依存し続けているのだ。しかし、そのことの不公平さをぼやく必要はない。この「体感性」こそが最良の「インターフェイス」であり、機器によらない情報伝達は、もしそれが可能なら、きわめて人間的なコミュニケーションだからだ。ステアリングの操作によるロールやヨーの立ち上がり、アクセルやブレーキの踏み具合によるGの増減は、傾斜計や加速度計を新設するよりも、素直に体感させることの方が素早く、結果として、まさに「人車一体」のビビッドなコミュニケーションを可能にする。

奪われつつある体感性。車の進歩とは果たして何か。

問題は別のところにある。それは、現代の量産車が、この「体感性」を確実に遮断する方向に進んでいるという事実である。あるいは、事態はもっと深刻で、将来の車は、人間から運転する愉しさを奪い取ろうとしているのかも知れない。静粛性の向上の代償として速度感は薄められ、快適性を追求した結果、路面からの情報は限りなく消し去られている。ドライバーがそれらの情報を感知して、適切に対応することなど無用と主張しているかのように・・・。その結果として、Fun to Driveのために残された唯一のインターフェイスすら消し去ろうとしている。運転を余分な仕事と見なす立場からすれば、それこそが車に求められる進歩かもしれない。しかし、運転を楽しもうとする私たちの立場から言えば、それは大いなる退歩である。大げさに言えば、運転操作から解放するのがヒューマンか、運転操作を残す方がヒューマンか…、善悪の問題としてではなく、立場の違いとして、私たちは、今、その選択を迫られているとも言えるだろう。

「Fun To Tune」。操る愉しさの拡大へ向けて。

当然のこととして、AutoExeの立場は後者である。時代の流れに逆らってでも、量産車の捨てつつある少数派の楽しみを回復しなければならない。ターゲットは、移動のための手段として設定された過剰な快適志向のマージンである。だから、そのマージンの適正化を図りたい。そうすればドライバーは、全身で車からの微妙な変化を感じ取ることができ、それを操る愉しさが生まれてくる。それがAutoExeの主張にほかならない。私たちの目指す「Fun To Tune」が、「Driving Sensation」つまり「体感性」にこだわり続けているのは、このためである。
もちろん、体感度が強すぎたり、想定外であったりすることは排除しなければならない。しかし、車側の反応を人間の期待値に同調させる「過渡特性の最適化」という私たちの基本命題の解決には、その前に、どうしても「人と車のコミュニケーションの確立」、そのためのインターフェイスの回復が欠かせない。後続の各セクションでは、このような私たちの「こだわり」と「ことわり」についてご説明したいと思う。量産車の過剰な快適性を少し削って、クルマとの対話を楽しむFun To Tuneの醍醐味を、ぜひご堪能いただきたい。