ストリートベストが、感性チューニングが、刺激し続けるもの。
それは「趣味性」という名の、あなたの感受力だと思う

2014年、私たちがモノづくりの鍵とすること。

時計の針を少し戻そう。昨年、一昨年と、私たちはこの総合パンフレットの冒頭で次のような考えを述べた。「クルマに対する憧れが希薄化しつつある現代、“移動のための手段”以外にクルマに乗る目的が失われつつあるのではないか?・・・しかし、機能を越えてカメラや腕時計にこだわる人がいるように、クルマがもたらす精神的高揚感を熱望する人々は確実に存在するし、私たちAutoExeも当然その一員である。つまりクルマを愛している人々にとって、チューニングとはより自分らしい自分を実現するための手段であり、突き詰めれば、それは日常性や合理的実用性の彼方の“趣味性”なのではないか」。
長い引用になってしまったが、「マツダ車個性化プロジェクト」を推し進めてきた私たちにとって、いま重要なキーワードのひとつがこの「趣味性」である。2014年、私たちはあらためてこのことを意識し、モノづくりの鍵としたい。なぜなら「趣味性」という言葉には、たんに個人的な愉しみにとどまらず、ものごとの味わいを感じとる力、美しさや面白さをどこに見出すかというその人の感覚、という意味があり、チューニングの歓びとはそのような感受性を深めてゆくことにほかならない、とあらためて私たち自身が気づいたからだ。

趣味性と響きあう、「ストリートベスト」チューニング。

不特定多数、多様な価値観を持つドライバーを対象とする量産車は、コストや生産性など様々な制約があるのが宿命だ。また走りの体感性も、静粛性や快適性の向上の代償として希薄な傾向になってしまうのも致し方ない。だが、趣味としてクルマにより緻密なデザインや濃密な運転フィールを求めるドライバーにフォーカスするなら話は別だ。量産車では実現できないピュアな走りや、デザインへの美意識に対するこだわりを、より鮮明に増幅させる味作りの手段としてチューニングの余地が存在する。
具体的にAutoExeが創業以来提唱するのは、「ストリートベスト」チューニングだ。ストリートベストといっても、世の中で運転する大半の人々にとっては、耐久性や乗り心地へのマージンが十二分に確保された量産仕様がベストセットだろうし、街中でレーシングマシンのような刺激を常に感じたい向きには、サーキット仕様やドリフト仕様という選択肢もある。だが、私たちはそういったニーズを対象にしていない。ステアリング操作にダルでもなく、神経質でもなくジワリとロールするサスペンション。ペダルワークに素直に反応する過渡特性に優れたスロットルやブレーキ、そして大人の感性にフィットさせる端正なスタイリングキット・・・ピーク性能追求型にありがちな粗野なチューニングではなく、走りの味のディテールを五感を通じて繊細に感じ取りたい。そんな感性の持ち主のためのチューニングにほかならない。

具体的にはストリートベストを以下のように実現している。

①あくまで量産車の設計思想を熟知した上で、量産車に必要な快適性や生産性のためのマージンを排除。一般論での快適性は量産車とは尺度を異にするが、量産仕様のバランスを保持しつつ「公道で運転を楽しみたい人」にとってベストな快適仕様を目指している。

②その実現のためには、例えば、エアロだけ、サスペンションだけといった単体部品の性能を追求しがちな部品発想ではなく、クルマ全体を視野に入れ最適なパーツをデザインする車種コンプリート発想のトータルチューニングが不可欠である。AutoExeは1997年の創業以前より、マツダのモータースポーツ部門を担っていたマツダスピード在籍者をルーツにしているため、この車種発想を得意としている。

③工業製品としては完成の域に達している量産車においても、人の感性に訴える“感性のチューニング”についてはいまだ解析が難題であり、改善の余地がある。私たちは、運転する楽しさ=“A New Driving Sensation”のテーマを実現すべく、自動車メーカーにはない少量生産システムやフレキシブルな組織、職人技の利点を活かしてファインチューニングを実践している。

④現代のチューニングでは環境や社会との調和を満たさなければならない。保安基準上車検をクリアすることは無論のこと、見た目の違和感や騒音のレベルなど、周囲に不快感を与えない佇まいや走りが求められる。もちろん運転する人のマナーも含めて、である。

趣味性の根幹を築く、「感性チューニング」。

冒頭で述べたように、趣味性とはものごとの味わいを感じとる力、美しさや面白さをどこに見出すかというその人の感覚である。ゆえに私たちが「ストリートベスト」の背景とする「感性チューニング」は、まさにこの趣味性と緊密に結びついている。そして感性チューニングについても2014年のさらなる進化を目指して、①ドライビングを愉しむための “乗り味のデザイン “=「動的感性」 ②所有する歓びのための “プロダクトデザイン”=「静的感性」、その両面を徹底洗練させる意気込みだ。

①動的感性面で先陣を切ったのは「ストリートスポーツサス・キット」。マツダ㈱でサスペンションの権威としてスポーツカー開発主査を歴任した貴島孝雄氏をスーパーバイザーに迎え、氏の提唱する「動的感性工学」とジョイントして、たんに柔らかいor硬いだけでは判断できない“乗り味”の奥深さを実現してユーザーや自動車ジャーナリズムから高い支持を獲得した。
そして2014年、私たちはそのサスペンションにおいて新たなアプローチを行う。ストリートユースにおいて私たちの許容できる限界ギリギリのレベルに挑んだ「アルティメットスポーツサス・キット※2月発売予定」である。より高いロール剛性を求めるピュアスポーツカーのパイロットたちのために、乗り心地へのマージンを限界ぎりぎりまで削ることで得られるハンドリングの快感を追求。その結果、シンプル、非調整、微低速域の高減衰比化・・・といった独自の設計思想を貫いている。
ここまで割り切ったチューニングは、ストラットサスを採用している一般的FFパッセンジャーカーでは技術的に成立しない。だからウィッシュボーンサスのFRスポーツ専用設計品としている。ストリートベストの本流は、あくまでストリートスポーツサス・キットであるが、アルティメットスポーツサス・キットにおいては趣味性を突き詰め、正しい限界を守りつつも、あえて冒険的に乗り味の選択肢を拡大した。

②静的感性における象徴はスタイリングキット。量産仕様では生産性やロードクリアランスの制約、さらにはメーカー個性化のためのデコレーション(上部グリルを極大に主張するフロントバンパーなど・・・)が宿命だ。現代のマツダデザインは、大人の趣味を重視とする私たちとしては、いささか受け入れにくい。ゆえによりシンプルかつダイナミックにリデザイン。流行に左右されない端正かつスポーティな佇まいを表現している。
そして、ドライバーの手に触れるユーティリティパーツや機能パーツについても高品位な味作りへ。例えば、溶接のビート、曲げの美しさ、パーツ自体の美しさやメカニカル感など、ますますの洗練を図り、チューニングにおける美意識の重要さもアピールしたいと願っている。
また製品だけでなくソフト面においても、私たちはカスタマーの信頼感や安心感を深めて行きたい。ウェブサイトの充実化や各地で行っている展示会などで詳細かつ真摯な情報公開を行い、チューニングを愛する心や価値観をいっそう共有したい所存だ。常に新しい走りの感動“A New Driving Sensation”を追求して、正統的チューニングの領域を広げるAutoExe。その歩みに、これからもご期待いただきたい。