KANSEI-TUNING@佇まい、存在感。


スタイリングにとっての期待感の源泉は、開発コンセプト(どういう車を目指したか)である。本当の話は多くの場合社外秘だが、ニュースリリースやカタログなどで概要は知ることができるから、人は自分なりの解釈で、その理想像を描くことになるのだ。RX−8の場合、厳密な言葉は別にして、それは、ほぼ「大人のための4ドア・スポーツカー」なのであろう。そして、カタログでは、そのことが「A Sports Car Like No Other」と謳われている。

問題のひとつは「大人」である。単なる4人乗りではなく、大人4人が乗れるという物理量を表現しているのは確かだが、そこに、人は感性面での期待値を持つ。つまり「大人の乗り物にふさわしい」という佇まい、もしくは存在感だ。そして、もうひとつの問題は「Like No Other」、つまり他の何にも似ていないということ。で、この2つのイメージを現車に投影しようとするわけだが、諸兄の期待値はどの程度満たされたであろうか?

私たちは、RX-8に乗る人をかなりな「大人」だと感じている。実年齢はそうでないとしても、その感性においては立派な大人だと。そして量産のデザインは、「Like No Other」であることにより多くのエネルギーを投入したのではないかとも。だから、感性面では、どこかしらギクシャクした印象が残るのではないかと。取り越し苦労かもしれないが、もしもそういう人がいるとしたら、そこに私たちの出番があると考えたのである。語弊はあろうが、私たちの狙いは「オリジナルよりオリジナルらしいRX-8」…大人の感性にフィットするスタイリングであった。

で、先ずは、いたるところに配されたREのモチーフとノイジーな抑揚をすべて排除して、徹底的にシンプルな面構成を追及した。フロントのインテークダクトはシングルダクトを強く意識したイメージを彫り込んだ。もちろん、控えめながらもフロントリフトを抑制し、エア吸入面積も増大させている。サイドエクステンションはボディから独立した形状でありながら、サイドビューとの一体感を強調しつつ視覚的な重心を低下させている。リアビューについても、ナンバープレート用のベースを国内専用デザインに作り直し、量産に比べてオーバーハングを短縮したシンプルなバンパーと、スポイラー形状に後端を持ち上げたトランクリッドを新設した。熱対策用アウトレットを設けるか否かで議論が沸騰したボンネットも、万が一の機能より基本的な美覚を優先し、敢えてフラットタイプを採用した。但し、超軽量な量産アルミ製に比較しても約20%の軽量化を達成するカーボンプリプレグとFRP素材のハイブリッド構造で高剛性と軽量化を高レベルで両立させている。

結果は、ご覧の通り。「よりスポーツ」であると同時に、「より大人な」風格を創り込めたと自負している。プレーンで仕立ての良いスーツをサラッと着こなすように、大人の価値観には、子供じみたギミックなど無用と思うのだ。